本研究では、初期太陽系における物質進化のプロセス及びタイムスケールを明らかにするために、隕石やその構成物質(CAIやコンドリュールなど)の精密同位体分析および年代測定を行った。年代測定では、絶対年代を求めるためのPb-Pb年代測定法の開発、そしてPb-Pb法だけでは年代測定が困難な試料に対応するためのMn-Cr年代測定法の開発を行った。Pb-Pb法では主に炭素質コンドライトの年代測定を行った。その結果、Allendeのような、熱変成の影響をあまり受けてない隕石がコンドリュール・CAIともに非常に古い年代(>4566Ma)を示すのに対し、神戸隕石のような熱変成を受けているものは、コンドリュールでも4512Maという非常に若い年代が得られることが明らかになった。これはPb-Pb法が熱変成に極めて敏感に反応することを意味しており、Pb-Pb年代の解釈に注意が必要であることを示している。一方、Mn-Cr法では主として分化した隕石(メソシデライトのマトリックスやユレイライトの全岩試料)の精密同位体測定・年代測定を行った。その結果、これまで炭素質コンドライト以外には存在しないと考えられていた54Crの同位体異常がメソシデライトやユレイライトにも存在することが明らかになった(ただし異常の方向は逆)。この同位体異常の発見は、今後さらに分析試料を増やすことでこれらの隕石の起源を明らかにするためのトレーサーになりうると考えている。またメソシデライトに関しては、その内部アイソクロンから、53Mnが消滅した後にMn-Cr系がリセットされた事が明らかになった。
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