2004年6月に引き続き、2005年6月にも気象庁凌風丸の西部北太平洋混乱水域におけるクロロフルオロカーボン類の各層観測を実施した。そして、この海域に存在する北太平洋中央モード水の形成時の大気に対するCFCsの飽和度を見積もった。この結果は、これまで同様に、形成直後の北太平洋中央モード水は周囲の水の混合の影響をほとんど受けていないにもかかわらず、大気に対して未飽和状態にあることが確認された。また、その未飽和の度合いは年ごとに変動しうる可能性が新たに示唆された。 そこで、その変動要因を調べるため、この海域に対して水温、混合層深度、風速等のこれまでの月平均値を用いた「混合層移流-混合モデル」を適応させた。その結果、観測結果とよく一致し、冬季の表層混合層ではクロロフルオロカーボン類は大気に対して未飽和にあり、また春季夏季にはむしろ過飽和にあるというこの海域の表層混合層のクロロフルオロカーボン類の大気に対する飽和度の季節変動を再現することが出来た。再現されたクロロフルオロカーボン類の飽和度の変動を用いることで、この海域での大気クロロフルオロカーボンの海洋への取り込み速度を算出した。その結果、北太平洋中央モード水形成域と考えられているこの海域は、大気気体成分の取り込みに対してかなり大きな役割を果たしている可能性が示唆された。そしてそれはこの海域の混合層の形成と密接に関係していることが分かった。(これらの結果は、すでに日本海洋学会、第37回海洋ダイナミクスに関する国際コロキウム等にて公表し、現在Journal of Marine Systemsに投稿中である。) 他の海域で形成されるモード水についても解析を行うため、WOCE等の利用可能な過去データからCFCsデータセットを作成した。データの解析は来年度実施する予定である。
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