研究概要 |
島弧の火成活動におけるマグマの生成には、沈み込むスラブからの物質供給が重要な役割を果たしている。このスラブからの物質供給の様式とフラックスを調べるのに、Hf同位体分析を応用するのが本研究の目的である。本年度はこの方法を、(1)東北日本弧第三紀における火成活動の変化、及び(2)アンデスオーストラル火山帯の火成活動の解明に応用した。 (1)東北日本弧第三紀に関する研究。 背弧海盆(日本海)の拡大と火成活動の変化の因果関係を調べるために、22Maより現在にいたる時期の火山岩のHf-Sr-Nd-Pb同位体分析を行った。その結果、22-15Maにおいては低いHf同位体比を持ち、その後現在にむけて値が上昇していくことが分かった。このことは、前者においてはスラブ融解により低いHf同位体を持つ成分がメルトにより島弧下マントルに運搬され、後者においてはスラブ脱水により水溶性流体には溶けにくいハフニウムが運搬されなかったとして説明される。これは22-14Maに起こった背弧海盆拡大時には島弧下に高温のマントル物質の上昇・注入が起こり、それがスラブ融解を引き起こしたと解釈された。 (2)アンデスオーストラル火山帯の高マグネシウム安山岩の成因に関する研究 この火山帯では典型的な高マグネシウム安山岩が見られ、沈み込むスラブが融解してできたメルトが火成活動の引き金になっていると考えられてきたが、このことをHf同位体分析を行うことにより検証しようとした。分析の結果、Hf同位体とSr,Nd,Pb同位体及び微量元素組成に明瞭な相関が見られ、スラブ由来のメルトがマグマの生成に関与していることが示された。 以上の結果は国際学会で一部発表しており、次年度に論文にまとめていく予定である。また、Hf同位体分析技術の改良を行っており、その一部を論文にまとめた。
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