研究課題
スラブの沈み込みやマントル対流といったマントルの分化過程を、Hf同位体を用いてアプローチしていくのが本研究の目的である。(1)沈み込むスラブの研究大陸性島弧である東北日本弧のHf-Sr-Nd-Pb同位体分析の結果から、スラブの脱水においてHf同位体はSr-Nd-Pbとは異なる挙動を示し、これらの同位体系が沈み込み帯における火成活動を調べるための有効なトレーサーであることが示された。この成果は論文にまとめ、G-cubedに受理された。一方海洋性島弧においてはこれまでスラブ脱水が島弧火成活動の主原因であると言われてきたが、ケルマデック弧ではみスラブ脱水とスラブ融解が同時に起きている可能性が指摘されてきた。このことを明確にするためにHf同位体を応用する研究を行った結果、ほとんどの海山はスラブ脱水の影響を受けているが、前弧域に存在する海山はスラブ融解の影響を受けていることが分かった。このことは比較的冷たいスラブの沈み込みにおいても小規模ではあってもスラブ融解が起こっていることを示唆する。この成果は論文にまとめ、投稿中である。(2)マントル内物質循環に関する研究上記の研究から、スラブが沈み込む時の脱水作用で、Pb>Sr>>Nd>Hfの関係でスラブから元素が移動することが分かった。そこで過去に沈み込んだスラブを起源としていると考えられるプルーム物質について、そのモデルが真に妥当であるのかを検証するための研究を行った。ポリネシア地域のプルーム起源の火山岩についてHf同位体等を分析した結果、Nd>Hfの関係を除いて確かにPb>Sr>>Hfのように元素が枯渇していることが分かった。従ってこのプルームの起源は過去に沈み込んだスラブと考えられるが、Nd<Hfとなっていたことは過去の海洋地殻(スラブの一部)が現在のそれとは異なり、より高圧の領域で部分溶融してできたことを示唆している。
すべて 2006
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Geochemistry, Geophysics, Geosystems (G-cubed) 7
ページ: doi: 10.1029/2005GC001220