平成16年度は予定通りに、本研究に必要な試料の収集と岩石試料からの鉱物分離を含めた同位体分析に関する準備を主として行った。また、マントル試料のリチウム同位体をより精度良く測定できるように、本年度はリチウム分離に関してカラムセパレーションをオールテフロン化することで密閉度をあげた。これによって外部からの汚染を軽減した。また、このシステムを用いることで、これまでのように数時間おきの分離操作が不必要となり実験作業がより簡便となった。さらに、岩石試料分解や元素分離の際に乾固作業が多く発生するが、一律にそれぞれにふさわしい温度上昇過程で昇温できるシステムを作成した。これらのシステム向上でより高精度で上質なリチウム同位体データがえられるようになった。次年度以降に同システムを用いた試料分析を本格的に行う予定である。また、既に得られていた中央海嶺火山岩(MORB)試料のリチウムデータの解析を行った。その結果、ヂュパル異常と呼ばれるインド洋のマントルの同位体異常の起原に対して制約条件を与えた。ヂュパル異常はそのPb-Sr-Nd同位体組成よりEM1的とされおり、海洋島火山岩中のEM1成分のリチウム同位体データと比較することで、謎の成分であるEM1成分の起原を多角的に議論することが期待される。中央海嶺火山岩試料のリチウム同位体を用いたヂュパル異常に関する研究結果は2004年秋に学会で報告して、現在、査読付雑誌に投稿するため準備中である。
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