1、レーザードップラー法を用いた格子変位量測定 レーザードップラー法を用いて、高温件下での格子変位パターンの測定を行った。半導性金属酸化物であるNiO薄膜を接合した場合においてもRayleigh-SAWの周期的な格子変位が生じていることを示し、SAWの伝搬損失とNiO薄膜の抵抗値からSAWがNiO薄膜内のキャリアと相互作用を持つことを明らかにした。 2、SAW伝搬路上に接合した薄膜の仕事関数変化を測定することが出来る光電子放出顕微鏡(PEEM)を用いた、種々の金属薄膜の電子状態に対するSAWの効果 光電子放出顕微鏡(PEEM)を用いてRayleigh-SAWにより発生することが出来る表面に対して垂直な格子変位が、SAW伝搬路上に電子ビーム蒸着法を用いて接合した、CuおよびAu薄膜におよぼす効果を調べ、アニール処理を行い、作製した低指数CuおよびAu薄膜表面においては、PEEM強度が減少したことから、仕事関数が増加し、一方、スパッタリング処理を行うことにより作製した、高指数CuおよびAu表面においては、PEEM強度が増加したことから、仕事関数が減少し、表面構造の違いで、SAWによる仕事関数の変化の方向が正反対になるということが明らかとなった。また、CuおよびAu薄膜とも表面処理が同じ場合には、SAWによる仕事関数変化の方向は同一であったことから、金属の薄膜種類によらず、SAWによって低指数面では仕事関数が増加し、高指数面およびステップサイトでは仕事関数が減少するものと考えられる。仕事関数変化の解析から、SAWにより低指数面では電子的作用が一方、高指数面では配位不飽和な最表面原子の移動が生じるサイト摂動作用の機構が明らかとなった。
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