本研究は、鎖状に連結した金微粒子を用いて空間選択的に注入されたエネルギーがどのような時間・空間スケールで伝播するのか、伝播に伴うエネルギーの緩和や散逸がどのような時間スケール・素過程を通して起こるのか、を解明することを第一の目的としている。さらに、金微粒子を有機微結晶やJ会合体を金微粒子に相互作用させた時に、金微粒子と有機物の配置する方向、位置、距離さらには、接触面積の違いによりエネルギー伝播の方向や伝播距離がどう変化するか、また、結晶や会合体の内部に金微粒子を包接させた時にその光学的性質がどう変化するか、金微粒子を励起した時に励起エネルギーが伝播する方向やエネルギー緩和や散逸過程が結晶軸、会合体の軸方向や端点からの距離にどのように依存するか、などを分子科学的見地から明らかにすることを最終目的としている。 本年度は、種々の形状・サイズの金微粒子がどのような光学・空間・時間的挙動を示すかを、微粒子内部の位置まで分解して(空間分解能約50nm)解明することを目的として以下3つの研究を行った。 (1)近接場単一粒子の透過スペクトル測定:波長以下の空間スケールで起こる光子と物質の相互作用について電磁気学的に基本的な情報を得た。 (2)時間分解ポンププローブ測定:各種サイズ形状の微粒子のピコ秒時間領域での動的挙動を観測した。電子-フォノン緩和のサイズ形状依存性、単一微粒子の位置(粒子の端や中央)に対する依存性から電子-フォノン散乱の変化を観測した。 (3)二光子励起発光測定:微粒子サイズ形状毎にスペクトルと励起確率イメージを測定し、発光スペクトルとバンド構造や励起確率イメージとプラズモンモードの相関を明らかにした。 これら研究からメゾスコピック領域の励起状態のダイナミクス(エネルギー散逸過程)や光学情報についての極めて重要な結果を得ることができ、今年度当初の目的を達成することができた。
|