研究概要 |
分子の立体配座を決定し,その安定性や配座異性体の存在率,あるいは,異性体間の変換速度やエネルギー障壁を決定することは分子構造化学の大きなテーマの一つである.なかでも,熱力学的に不安定で,存在率の小さい配座の検出および構造決定は多くの研究者の興味を集め,これまでに膨大な研究が行われている.研究代表者はこれまでに,様々な種類の有機分子(例えばスチルベン(Ph-CH=CH-Ph)について温度変化X線結晶解析を行い,これらの分子が,結晶中で自転車のペダルをこぐような運動(2つのベンゼン環がペダルに相当)を行い,それによって配座変換が起こっていることを明らかにしている. 本研究では,スチルベン,アゾベンゼン(Ph-N=N-Ph),およびベンジリデンアニリン(Ph-C=N-Ph)誘導体の単結晶を液体窒素温度に瞬間冷却し,その状態の高精度X線結晶解析を行うことで,通常の方法で冷却した状態とは異なり,配座変換が凍結された熱力学的非平衡状態を観測することが出来た.また,アゾベンゼンの結晶では,低温の平衡状態では存在できない不安定な配座のX線結晶解析にも成功した.
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