研究概要 |
本研究課題は,硫黄-窒素(S-N)三重結合を活用する新規有機合成試剤および,新規機能性材料の創製を目的に,1)S-N三重結合の窒素原子の塩基性を活用する非イオン性強塩基試剤の設計・合成と種々の合成反応への利用,2)(S^<VI>-N)_n結合を主鎖にもつ化合物の合成とその特殊機能の開拓および,3)λ^6-スルファンニトリル類から誘導した新規ヘテロクムレン化合物(RN=S^<VI>=C=S^<VI>=HR)の結合特性の開拓を行う。 本年度の研究計画に基づき実施した研究成果を以下に述べる。 1,(S^<VI>-N)n結合を主鎖にもつ化合物の合成 最近研究代表者らは,フルオロスルファンニトリル1(Ph_2FS≡N)が(S^<VI>N)n結合を主鎖にもつ化合物のビルディングブロック剤として利用できることを見出している。そこで今回,既に合成に成功したPh_2(HN)=S=N-(Ph_2)S≡Nと化合物1との反応を行ったところ,さらにS^<VI>-Nが拡大したPh_2(N≡)S-N=(Ph_2)S=N-(Ph_2)S≡N2を得ることに成功した。また化合物2を効率良く得る合成法を種々検討したところ,ジフェニルスルフィミド(Ph_2S=NH)と5当量の化合物1とを塩基存在化で反応させた系において,化合物2をほぼ定量的に得ることに成功した。 2,新規ヘテロクムレン化合物の結合特性の開拓 申請者は、メチル-λ^6-スルファンニトリル(Ph_2MeS≡N)を出発物質として新規ヘテロクムレン化合物((MeN)Ph_2S=C=SPh_2(NMe))をはじめて合成することに成功した。今回は,S^<VI>=C=S^<VI>結合のさらなる特徴を探索するため,種々の官能基を有する化合物の合成について検討した結果,電子吸引基を持つN-アシルヘテロクムレン誘導体の合成に成功し,さらにその分子・電子構造についても明らかとした。
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