新しい高感度FDCDは日本分光との共同開発で、試作一号機で性能を確認して昨年度までに報告した。このFDCDは最近、既存のどのCD測定装置上でも動作するユニバーサルなFDCD付属装置として製品化されている。本年度は同試作機を使って、FDCDの基礎的研究を以下の通り実施した。 (1)理論的に予測されているFDCDの基礎事項を実験的に精査するため、分子の基本骨格として明瞭なCDを与える励起子キラリティー系を選び、できるだけ多くのモデル化合物を系統的に合成してFDCDおよび各種スペクトルを測定している。この結果が今後のあらゆるFDCDの基礎データとなるよう得られた各種スペクトルを精査し、現在までに合成した約30種類のモデルからは、試行錯誤的ながらエネルギー移動の関与を示唆する結果が得られている。 (2)励起子キラリティー法にFDCDを適用するのに最適な発色団の探索として、米国のLightnerらが開発した蛍光発色団DipyrrinoneにもFDCDを適用し、各種溶媒中で感度が大幅に向上することを見出した(未発表)。 (3)FDCDの応用研究として簡便かつ系統的な糖鎖解析を想定し、代表的な単糖類ならば、同一試料のCDとFDCDを単純比較するだけで糖の種類と結合様式を簡単に特定できることが分かった(未発表)。現在はオリゴ糖への応用を検討中である。 最終年度となる来年度は、励起子キラリティー法のモデル合成と各種スペクトルの精査をに用いられる7種の発色団の全組合せ(56種類)まで拡張するとともに、さらに他の化合物系にもFDCDを適用して行きたい。
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