カテナン、ロタキサンのような機械的な結合を持ち、複雑な構造を有する分子は、新規な材料としての応用、ナノスケールの分子デバイスや分子スイッチとしての可能性から、超分子化学の分野で非常に注目を集めている。カテナンやロタキサンの持つ機械的な結合によって生じる、回転運動、往復運動、ねじれ運動、伸縮運動といった様々な運動性は、外部からの化学的、電気的、光化学的な刺激によって制御することが可能である。以前ジオキサ[2.2]-オルトシクロファン骨格を持つクレフト分子が、π-π相互作用により電子受容能を有する平面π電子化合物を包接することを見いだした。そこで、このクレフト分子にロタキサンの運動性、および運動の制御能を導入し、平面π電子化合物選択的捕捉能などの新規な機能発現を検討した。 環状分子導入の足がかりとなる官能基を有する、ジオキサ[2.2]-オルトシクロファン骨格を持つクレフト分子の合成を行った。得られたクレフト分子両末端に、環状分子部位となるクラウンエーテルを導入した。得られたクレフト分子と平面π電子化合物との包接能を検討したところ、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノベンゼンを二枚のナフタレン環で挟むようにして包接することが明らかとなった。溶解度を上昇させるため、クレフト分子にアルキル鎖を導入すると、包接能が著しく減少することが明らかになった。次に、クラウンエーテルと相互作用するアンモニウムカチオンを2個有する軸分子の合成を行った。クレフト分子と軸分子との会合挙動をNMRを用いて観測したところ、クラウンエーテルとアンモニウムカチオンの相互作用により、擬ロタキサンを形成することが明らかとなった。
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