前年度合成に成功したビシクロ[2.2.2]オクタジエン縮環トリピランを用いて[3+1]型のポルフィリン合成反応により、新規共役拡張ベンゾポルフィリン類の合成を行った。まず、アセナフチレンおよびビシクロフルオランテンが結合したジホルミルピロールを合成し、これを3+1合成に用いた。得られたビシクロ縮環ポルフィリンの逆Diels-Alder反応により、目的とするπ系拡張分子へ誘導できることを見いだした。アセナフト、およびフルオラントベンゾポルフィリンは共役拡張により大きく深色シフトした吸収スペクトルを示した。同時に、フタロシアニンにも匹敵する強く鋭いQ帯を示すことが明らかになった。 また、何種類かのアズリトリピランの合成に成功した。アズリトリピランを用いた[3+1]ポルフィリン合成反応とそれに続く逆Diels-Alder反応により共役拡張アズリポルフィリンを合成できることを明らかにした。その結果、モノ-、ジ-、トリベンゾアズリポルフィリンのように共役の程度を制御したものや、アズリチアトリベンゾポルフィリンなど、共役拡張型の核修飾アズリポルフィリンの合成に成功した。以上の成果は、日本化学会主催の学会などで発表し、その一部は雑誌論文として投稿した。 ヘテロサイクルとジ(1-アズレニル)メチリウムユニットの組み合わせによる新たなエレクトロクロミズムとなる系の構築を試みた。ジ(1-アズレニル)メチリウムユニットとピロールとからなるメチルカチオンを合成した。pHメーターを用いて各pHでの吸収スペクトルを測定し、pK_R+値を算出し、カチオンの安定性を調べたところ、pK_R+値は10以上を示した。また、アズレン環上の置換基のみではなく、ピロール環にビシクロ環を連結させることでも安定性の向上が見られた。また、新規導電性有機材料の構築を目指し、1-および6-アズレニル基によるカチオン/アニオン安定化効果の寄与を受けたイソチアナフテンオリゴマーの合成に着手した。
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