^tBuMePhGeHに^tBuLiをTHF中で作用させると対応する^tBuMePhGeLiが定量的に得られた。しかしこのゲルミルリチウム試薬は光学活性体ではなくラセミ体であった。ここに不斉配位子である(-)-スパルテインを作用させてペンタン中で放置すると、^tBuMePhGeLiに(-)-スパルテインが配位した化合物のみが選択的に結晶化し、ただ一方の光学異性体であることを見出した。そのゲルマニウム上の絶対配置がRであることをX線結晶構造解析の異常分散を利用することにより決定した。この成果は高周期14族元素中心陰イオン種における光学活性体の絶対構造を決定した最初の例である。また同様の方法を用いることにより、ゲルマニウム中心陰イオン種ばかりでなく、ケイ素中心陰イオン種に置いても適応可能であることを見出した。すなわち、(^tBuMePhSi)_2に(-)-スパルテイン存在下、リチウム金属と反応させることにより、光学活性なシリルリチウムである(R)-^tBuMePhSiLiの合成および単離に成功した。またこの絶対立体配置をX線結晶構造解析の異常分散を利用することにより決定した。これらの光学活性高周期14族元素中心陰イオン種とさまざまな基質との反応を行い、その反応における立体化学を明らかにすることができた。これらの研究成果は、高周期14族元素化学における光学活性体の合成を容易にし、高周期14族元素に特徴的な種々の素反応における反応機構の解明を行う上で重要な意味を持つと考えられる。
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