タキソール骨格のB環形成に引き続くBC環形成、さらにABC環形成によって、19-ヒドロキシタキソイドの立体選択的合成を達成した。つまり、B環はエポキシケトアルデヒドのヨウ化サマリウム(II)による分子内ダブルアルドール反応によって合成した。また、BC環はトリメチルアルミニウム存在下での共役付加反応を経て合成したエポキシアルデヒドの、ヨウ化サマリウム(II)による分子内ダブルアルドール反応によって合成した。さらにABC環は、低原子価チタンを用いるピナコールカップリング反応によって構築した。19-ヒドロキシタキソイドは、上記のように合成したABC環の保護基の脱着および酸化還元過程を経て、ビシナルジオールのオレフィネーションによって合成した。 これまで困難とされていたエノン類のβ位のビニル水素をアルキル基で直接置換する新しい手法を開発した。つまり、高次ジアルキルシアノクプラートとエノン類との反応の後、塩化N-t-ブチルスルフィンイミドイルとの反応によって、低温下でβ-アルキルエノン類が効率的に生成することを見いだした。 グリコシルN-トリクロロアセチルカルバメートを糖供与体として用いることによって、モレキュラーシーブス5A存在下、触媒量のルイス酸によって上記の糖供与体が活性化され、様々な糖受容体と効率的に反応し、立体選択的にαまたはβ-グリコシドを合成する新しい手法を見いだした。この方法は1-ヒドロキシ糖からワンポットで糖供与体の合成およびグリコシル化を行えるという点で既存の方法よりも簡便にグリコシル化反応を行うことができる。
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