研究概要 |
六方晶ペロブスカイト構造を持つ以下の化合物を新規合成し、その構造・磁気的性質を明らかにした。 (1)六方晶ペロブスカイトBa_3LnIr_2O_9(Ln=ランタノイド)の合成と磁気的性質に関する研究 Ba_3LnIr_2O_9の合成を試み、目的の化合物を得ることに成功した。これらはLnO_6八面体とIr_2O_9ダイマーが交互に並んだ構造を持ち、以前に報告したBa_3LnRu_2O_9と同型の構造であることが明らかになった。Ru(4d電子系)からIr(5d電子系)に変えることで軌道角運動量の寄与が現れ、ダイマーの磁気的挙動に顕著な違いが現れることを見出した。また、このシリーズの磁気的性質は反強磁性的であるが、Nd化合物のみが強磁性的挙動を示すことを発見した。 (2)六方晶ペロブスカイトBa_3PrM_2O_9(M=Ru,Ir)のEPR的研究 Ba_3LnM_2O_9化合物中で、ランタノイドが通常とは異なる4価の酸化状態をとるBa_3CeM_2O_9とBa_3PrM_2O_9に注目し、そのランタノイドサイトの局所的な情報を得るためにEPRによる研究を行った。非磁性であるCe^<4+>イオンを4f^1電子配置のPr^<4+>イオンで少量置換することでEPRスペクトルの測定に成功した。得られたスペクトルから、Prイオンの4f電子が受ける結晶場の影響に関して明らかにすることができた。 (3)六方晶ペロブスカイトBa_3MSb_2O_9(M=Mn,Co,Ni)の磁性と中性子回折実験 ダイマーサイトに非磁性のSb^<5+>イオンを導入したBa_3MSb_2O_9の合成を行い、磁性をもつM^<2+>イオンの磁気的性質に関する研究を行った。この化合物ではM^<2+>イオンが二次元三角格子を形成しており、磁化率・比熱測定によって低温における低次元性と磁気的フラストレーションを反映した特異な磁気的性質を見出し、中性子回折測定によってその磁気構造の決定に成功した。
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