研究概要 |
光応答性部位としてルテニウム(II)トリスビピリジル誘導体を有し、反応サイト(M)としてRu,Rh,Ir,Pdを含むRu...M二核錯体{(bpy)_2Ru(BL)ML}^<n+>(BL=2,2'-bipyrimidyne,2,3-bis(2-pyridylpyrazine)を合成し、その同定に成功した。これらの錯体の同定には^1H,^<13>C NMR,IR,ESI-MSスペクトルを用い、いくつかの錯体についてはX線構造解析によりその構造を明らかにした。合成した錯体の物性はCV,UV-vis,蛍光スペクトルにより調査した。CV測定の結果、Ru(II/III),BL(O/1-),BL(1-/2-)に基づく酸化還元電位はいずれも大きく正側にシフトするが、導入した金属部位MLの金属中心の酸化還元電位(M(n/(n-1)など)はほとんどシフトせず、二核錯体を形成することによりRu, BLの電子密度が低下し導入した金属中心Mの電子密度はほとんど低下しないことが示唆された。さらに、二核錯体の蛍光スペクトルを測定したところ、Ru(ligand(bpy,BL)へのMLCTに基づく発光量が対応する単核錯体[(bpy)_2Ru(BL)]^<2+>のそれに比べて大幅に低下しており、金属(ML)の導入によりMLCT発光がquenchされることがわかった。この結果はルテニウム中心から金属中心(ML)へのエネルギーあるいは電子移動を示唆するものである。 上記の合成、物性調査に引き続き、合成したRu...Pd二核錯体の光照射条件でのさまざまな基質に対する反応性を検討した。末端アルケン類との反応では選択的に二量化反応が進行し、光照射条件では暗反応条件に比べて大幅に反応速度が向上することを見出した。現在反応機構の詳細について調査している。
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