研究概要 |
近年,元素の重い極限領域における電子状態に関する情報を得ることを目的として,重元素,とくに原子番号103を超える超アクチノイド元素(超重元素)の化学的性質を調べる研究が脚光を浴びている. 本研究では,理化学研究所(理研)加速器研究施設リニアック棟に既設の気体充填型反跳分離装置(GARIS)の末端に,ガスジェット搬送装置を新規設置し,物理的に前段分離された超重元素を気体または液体クロマトグラフなどの化学分析装置に供給する新しいシステムを開発した.GARIS本体とガスジェットチャンバーの間は,厚さ2.5μm,直径60mmの極薄マイラー箔で仕切ることに成功した.GARISで前段分離された超重核は,真空窓を通過し,ヘリウムガス中で捕獲される.チャンバー内の体積は,超重核のヘリウム中での飛程を考慮し,長さ20〜60mmのスペーサーによって最適化できるようにした.チャンバー内壁を構成する部品はすべて耐化学薬品性に優れたダイフロンまたはテフロンで製作した.これにより,直接チャンバー内に錯形成試薬などを導入することも可能となった.一方,ガスジェットチャンバーに導入された超重核の絶対量を測定し,ガスジェット搬送効率を評価するため,回転式アルファ線連続測定装置を開発した.本装置の性能試験は,理研仁科記念棟に設置されたガスジェット結合型オンラインマルチトレーサー製造装置を用いて行った. 将来,本システムを用いて112番元素の気相化学分離実験を行うため,ガスジェット結合型オンラインマルチトレーサー製造装置を用いて軽い同族元素であるHgの放射性同位体を製造し,112番元素を模擬したAu金属に対する吸着クロマトグラフ実験を行った.
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