研究概要 |
半導体加工技術を利用して作製されるマイクロ分析システムは,分析時間の短縮,試薬・試料の節約,分析コストの低減を可能とし,分析効率の大幅な効率化もたらすものとして近年注目されている。特に,バイオテクノロジーにおける強力なツールとして期待できる。一方,液体クロマトグラフィー(LC)は,今日広く利用されている分離計測法であるが,その機能をマイクロチップ上に集積化する研究は極めて少ないのが現状である。本研究の目的は,試料導入部,分離部,検出部というLCの必須要素を集積化した高性能なマイクロシステムを構築し,これを生体分子の分離分析に適用してその有用性を実証することである。LCマイクロチップは,ガラス基板上にフォトリソグラフィー/化学エッチング法により作製した微小の溝を流路とし,オクタデシル基などで流路の一部を化学修飾した部分を分離カラムとする。マイクロチップ上のカラムは,限られた面積に蛇行させる形で配置する必要があるため,ターン部分で試料バンドの乱れや拡散が生じて,分離能が低下することが予想される。そこで,本年度は,限られた面積に流路を配置する際のターン部分の形状に関する検討を行った。そのために,形状を変えて作製した微小流路に蛍光物質をインジェクトし,そのバンドの蛍光顕微画像を解析した。その結果,幅が等しい流路ではバンドの拡散が観察されたが,直線部分からターン部分に向かって幅が徐々に細くなるような流路ではバンドの拡散が抑制された。すなわち,ターン部分の外周と内周の差を小さくすることが試料バンドの低分散化に寄与することがわかった。この検討のほか,マイクロチップ上での電気化学検出のため,流路の末端に蒸着法により金電極を設けたマイクロチップを作製し,その性能をフロー系で評価した。その結果,測定値の変動は約5%と良好であり,60回の測定で測定値に変化はなかった。
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