本研究では、フェムト秒レーザーを光源として用いる多光子イオン化質量分析法により、多塩素化ダイオキシン類のイオン化・検出を実現することを目的としている。平成16年度は、本研究の主要な研究課題である紫外フェムト秒レーザーの発生、及びダイオキシン類のイオン化において、マイルストーンとなる以下に示す実験結果を得た。 1.ダイオキシン類のイオン化光源として用いる紫外フェムト秒レーザーを発生させる為の装置の改良を行った。この結果、波長:260nm、エネルギー:40μJ、パルス幅:150fsの紫外短パルスレーザーの発生に成功した。 2.パルスパルブを用いずにキャピラリーを用いて試料を直接導入するため、ノズル部の改造を行った。これにより、繰返し周波数1kHzの高繰返し紫外レーザーをイオン化光源とするダイオキシン類の質量スペクトルの測定が可能となった。また、従来のノズル・駆動装置、及びそれらとレーザーのタイミングの調整が不要となり、測定時間の短縮が達成された。 3.紫外フェムト秒レーザーを用いて、ダイオキシン類の前駆体であるクロロベンゼンとテトラクロロベンゼン、及び2-モノクロロジベンゾフランの質量スペクトルの測定を行った。また、レーザーのパルス幅によるイオン化効率の比較検討を行う為、ナノ秒レーザー及びピコ秒レーザーを用いて多塩素化ダイオキシン類の質量スペクトルの測定を行った。その結果、レーザーのパルス幅が短くなるにつれて、多塩素化ダイオキシン類の感度が向上することが実証され、フェムト秒レーザーの有効性が確認された。
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