タンパク質間相互作用解析システムへ適用可能なタンパク質の部位特異的な蛍光標識化法の開発を行った。本研究ではアスパラギン酸残基を複数含む10数量体程度のペプチドを分析対象のタンパク質の末端へ導入し、ランタノイド金属イオンと錯形成させる。この際、ペプチド配列中にトリプトファン残基を導入し、トリプトファン残基からのエネルギー移動によりテルビウムイオンを発光させることが可能である。一方で、外部から光増感剤としてβジケトン配位子を添加すると、ユウロピウムイオンを発光させることが可能である。今年度はアスパラギン酸残基とトリプトファン残基を組み合わせた15量体のペプチド配列を、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパクとして発現させ、その発光挙動を検討した。この融合タンパクへテルビウム金属イオンを添加したところ、トリプトファンの光励起に基づき、テルビウム金属イオンの遅延蛍光が確認できた。その金属錯体の安定性は極めて高く、解離定数は少なくとも1nM以下であり、その発光強度もCy5と同等かそれ以上であることがわかった。また、グルタチオンプレートを利用して、ペプチド配列を有するGSTを固相担体上に固定化し、その発光挙動を検討した。その結果、GSTの添加量に応じて発光強度が増大し、少なくとも100pmolのタンパクが存在すれば検出可能であるということがわかった。一方で、ユウロピウム金属イオンと錯形成させ、βジケトンを添加し、そのβジケトンからのエネルギー移動に基づいた蛍光測定も試みた。予想通りβジケトン添加に伴い、ユウロピウムイオンの発光が確認できた。また固相担体上では、GSTのみのコントロールとの間に明瞭な差が見られ、タンパク質の蛍光標識化法として活用できることを示すことができた。
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