平成16年度の研究において、(S)-2-アニリノメチルピロリジンの芳香環にヒドロキシメチル基の結合したジアミンを合成し、これをシリカゲルに固定化して非対称ケトンの不斉ボラン還元反応を行ったが、良好な結果が得られなかった。そこで、平成17年度は、この化合物の脂肪族アミノ基をベンジル化したジアミンを新たに合成し、これをシリカゲルた固定化した後、ベンズアルデヒドに対するジエチル亜鉛の不斉付加反応の検討を試みた。 まずはじめに、この光学活性ジアミンをシリカゲルに固定化せず、均一系触媒として使用することで、不斉付加反応を試みた。その結果、ヒドロキシメチル基が芳香環のオルト位に結合したジアミン(1a)では良好な結果が得られなかったが、メタ位に結合したジアミン(1b)を用いたところ、93%eeという高い選択性で、(R)-1-フェニルプロパノールが得られた。次に、均一系の反応で良好な結果が得られた1bをシリカゲルに固定化した後、不均一系で不斉付加反応を行った。その結果、均一系の時と比較して選択性は低下したものの、70%eeで光学活性アルコールを得ることができた。さらに、このシリカゲル固定化触媒の再利用について検討を行った。その結果、2回目の再利用では65%ee、3回目の再利用では50%eeと、選択性は次第に低下したものの、今後、触媒の洗浄方法などを検討することにより、再利用が十分に可能であることが示された。 シリカゲルへの触媒の固定化によって選択性が低下してしまう原因として、シリカゲル表面の水酸基の影響が考えられる。そこで現在、クロロプロピルトリエトキシシランで化学修飾したシリカゲルをさらにトリメチルシリルクロリドと反応させることでシリカゲル表面の水酸基をトリメチルシリル基でキャップし、その後、ジアミンを固定化する試みを行っている。
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