研究概要 |
平成17年度は昨年度に引き続いて、まず2-ジブチルホスフィノ-2'-ヒドロキシ-1,1'-ビナフチルの銅錯体を用いた不斉1,4-付加反応について検討した。既に、ジエチル亜鉛を求核剤に用いる非環状エノンのエチル化で高選択性を示すことを明らかにしているので、今回はフェニル化について検討した。ジフェニル亜鉛とジメチル亜鉛から調製したメチルフェニル亜鉛を求核剤に用いて、1-フェニル-2-ブテン-1-オンに対してフェニル基の1,4-付加反応を行ったところ、75%eeと中程度の選択性が得られた。 一方、芳香族アルデヒド類へのフェニル化によって得られるジアリールメタノール類は、医薬品合成の中間体として有用な化合物である。そこで、上記検討と並行して、今回新たにアルデヒド類の不斉フェニル化についても検討した。我々は既に、ビナフトール-3,3'-カルボキサミド誘導体がジエチル亜鉛を用いたアルデヒドの不斉エチル化で高選択性を示すことを報告している。そこで、ジエチル亜鉛の代わりにエチルフェニル亜鉛を用いれば、フェニル化が高選択的に進行するものと期待された。そこで、p-クロロベンズアルデヒドを基質とし、触媒量(10mol%)の配位子の存在下、フェニルホウ酸とジエチル亜鉛から系中で調製したエチルフェニル亜鉛を用いてフェニル化を試みた。エナンチオ選択性は、配位子の窒素原子上の置換基に依存し、n-ブチル基を持つ場合に最も良い結果が得られた。溶媒効果について種々検討したところ、t-ブチルメチルエーテルとトルエンの混合溶媒を用いた時に、95%eeの高選択性が得られた。この最適条件下では、直鎖状脂肪族アルデヒドのフェニル化でも91%eeと高選択性を達成することができた。芳香族及び直鎖状脂肪族アルデヒドの双方のフェニル化で90%eeを越える選択性を達成したのは、今回が初めてである。
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