研究概要 |
平成18年度は昨年度に引き続き、2-ジブチルポスフィノ-2'-ヒドロキシ-1,1'-ビナフチルの銅錯体を用いた不斉1,4-付加反応について検討した。既にエチル化とフェニル化について検討しているので、本年度はメチル化の検討を行った。まず、ジメチル亜鉛を求核剤に用いたところ、91%eeの高選択性が得られたが、化学収率が14%と極めて低い値であった。次に反応性の高いトリメチルアルミニウムを用いたところ、化学収率は89%と改善されたが、不斉収率が16%eeに低下した。そこで、反応剤のアルミニウム試薬を適切に捕捉できるように、C3'位にo-メトキシフェニル基を導入したところ、期待通り80%と良好な化学収率とともに、90%eeの高選択性で生成物が得られた。さらに反応条件の至適化を行い、92%eeまで向上させることができた。 一方、昨年度から新たに開始したアルデヒド類の不斉フェニル化の継続として、本年度はサレン錯体を触媒に用いた不斉フェニル化の検討を行った。反応性と選択性は、サリチルアルデヒド部のC3(3')位の置換基の種類に大きく依存し、t-ブチル基が最も良い結果を与えた。一方、C5(5')位の置換基については大きくは影響しないが、水素原子や電子求引基を持つものでは選択性が低下した。C3(3')位とC5(5')位の双方にt-ブチル基を持つもので条件を最適化したところ、o-トルアルデヒドの反応で96%eeの高選択性を達成することができた。 なお、サレン錯体を用いた不斉ヒドロホスホニル化の検討も行い、芳香族アルデヒドと脂肪族アルデヒドの双方で80%eeを越える高選択性を達成した。この成果については、現在論文投稿中である。
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