研究概要 |
グリーンケミストリーを指向した環境調和型反応の開発が強く求められている昨今,グリーンな溶媒として知られるフルオラス溶媒とそれに固定化されリサイクル可能な触媒を用いる反応の開発は,重要な課題のひとつである。昨年度は,フルオラス/有機二相系(Fluorous Biphasic System ; FBS)ルイス酸触媒反応の工業化を視野に入れて,フルオラスルイス酸触媒によるエステル化反応や過酸化水素水によるBaeyer-Villiger反応の流通反応化を行い,エステル化反応に関してはベンチスケールでの反応をも達成した。本年度は,FBS反応として三級アルコールのエステル化やプリンス反応の検討を行った。また前述の流通反応の際に問題となるフルオラス触媒のみならずフルオラス溶媒の有機溶液へのリーチング問題を解決するために,よりリーチングの起こりにくい溶媒の探索を行った。まず,三級アルコールのエステル化であるが,tert-ブチルアルコールのような通常のアルコールのエステル化は,FBSにおいてもエステルは10%も得られず,大部分は脱水体であった。しかしながら,電子求引基の置換した三級アルコールで行うと,目的のエステルが高収率で得られることを見出した。また,プリンス反応では,1,1-二置換オレフィンとパラホルムアルデヒドやパラアルデヒドとの反応を行った。その結果,競合すると思われたエン反応生成は全く得られず,プリンス付加体である1,3-ジオキサンが高収率で得られた。最後に,溶媒系の探索であるが,有機溶媒をトルエンに固定し,種々のフルオラス溶媒の有機溶媒への溶解度を調べたところ,ポリエーテル系の沸点200-300℃付近のフルオラスの溶媒の溶解度が小さく,実用的であることを見出した。さらに分子量の大きいポリエーテル系溶媒は,粘度が高すぎるために,溶媒としては使い物にならないことも併せて見出した。
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