これまで我々の研究室では有機塩を用いた超分子集合体の設計を行い、様々な構造体を作り出すことに成功してきた。そこでこれまで作り出すことに成功した非共有結合性高分子、超分子集合体を応用することで既存の物質と同様の構造と機能を発現できないかと考え、本研究の目的とした。自己組織化の過程を用いることにより均質で多様な機能を付与した構造体を得ることができると考えた。 以下に昨年に引き続き得られた結果を列挙する。 1.昨年に引き続き、構造ユニットとして有機塩を用い、超分子ナノデバイスとなりうる構造のスクリーニングを行った。得られた有機塩の構造および化学的性質を赤外分光法、熱重量分析、単結晶X線構造解析により明らかにした。 2.ステロイド、アルカロイドはらせん状超分子構造中に様々なものを包接する能力があり、これらの化合物を用いて水素結合による超分子構造の構築を行い、構造および包接現象を種々の測定により明らかとした。 3.さらに金属原子・金属イオンとの超分子錯体を作成し、これらを用いることで光電物性の得やすい包接化合物設計を行った。 4.また溶液中においてもらせん状超分子構造の形成を試み、マススペクトル、円二色楕円偏光、核磁気共鳴分光法、サイズ排除クロマトグラフィーなどを用いて形成および形状等を調べた。 5.これらの有機塩において、繊維状の超分子構造を形成するものを発見した。これらはオイルゲル化能を有し、非常に極性の高い溶媒をゲル化させることに成功した。
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