平成16年度はケギン型リンモリブデートの1つのモリブデンを2価の遷移金属に置換し、セシウム塩として単離する際にその2次構造を制御する方法の検討を行った。2価のコバルトで置換した化合物のセシウム塩の2次構造および酸点の数を制御できることはすでに分かっていたので、これをさらに発展させ、銅、ニッケル、亜鉛、マンガン置換体の合成に適応した。コバルト錯体と同様に2次構造および酸点の数を変化させることが可能だということが分かった。セシウム塩として沈殿を作成する水溶液のpHおよびセシウムイオンの数によってその2次構造が立方晶または正方晶と変化する。溶液のpHが低いほど立方昌が高いほど正方昌が得られる傾向にある。さらに、立法昌構造のものは正方昌構造のものに比べて酸点が多く含まれる。これらの傾向は置換する遷移金属によらず一定であるが、立方昌構造のものと正方昌構造のものを純度良く分離するためには、それぞれの遷移金属によって合成条件を最適化する必要があった。現在までのところ立方昌構造を有するコバルト、銅、ニッケル、亜鉛、およびマンガンで置換されたリンモリブデン酸塩を純度良く単離する方法を見出している。正方昌構造体を純度良く得る合成法は銅誘導体で見出しており、これまでの知見をもとに他の遷移金属へも応用展開中である。これまでに得た化合物の酸化還元特性をイソプロパノールの酸化反応をモデルとして検討し、銅誘導体、コバルト誘導体が優れた酸化特性を有することが見出された。これら化合物の酸化還元特性と分子構造、バルク構造との相関を探る研究を進めている。
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