研究概要 |
金属内包フラーレンは、『球面の内側に金属原子を取り込んだ特異な構造』のみならず、金属原子から炭素ケージへの電子移動により空フラーレンとは異なる新規な電子的特性を持つ。これは、金属原子によるフラーレンケージのチューニングであると言える。金属内包フラーレンは新しい材料として非常に注目を集めているが、その生成量の少なさ故に、いまだ一部の研究しか行われていないのが現状である。特に、C60の化学において非常に精力的に行われてきた化学修飾による誘導体の合成に関する研究は未だほとんど行われていない。本研究は、金属内包フラーレンナノロッドの合成を行い、ESR、SQUID及び導電性の測定を行うことを目的としている。そこで、平成16年度は金属内包フラーレンの配向性を高めるために金属内包フラーレンに化学修飾による誘導化を行った。 本年度は金属内包フラーレン(M@C82,M=La,Ce,)をアーク放電法により大量合成し、HPLCにて分離生成した。分離精製には、最近申請者らが開発した電解法を利用した新規な大量分離法を用いて、効率化を図った。精製単離した金属内包フラーレンについて、1,3-双極子付加反応、Diels-Alder反応等による誘導体の合成を行った。得られた誘導体は常磁性であるため、そのままではNMR等による構造決定は困難である。そこで、イオン化による反磁性化を行い、NMR等による構造決定を行った。また、単結晶化も併せて検討し、X線結晶構造解析による構造決定にも成功した。
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