前年度の研究で得た、マイクロカプセル中におけるポリシランの円二色性強度の濃度依存性、マイクロカプセルサイズの依存性に関する研究を進め、マイクロカプセル内におけるポリシラン【ポリ((S)-3-メチルペンチルシラン)】の凝集構造および機能について考察し、以下の結果を得た。(1)吸光度測定よりCDが観察される波長領域においてマイクロカプセル由来のかなり大きな濁度が存在するにもかかわらず、ポリシラン由来の吸光度は溶液中の値の70%を超える値が検出されることが分かった。このことはマイクロカプセル中の円二色性の絶対値を測定できることを示す。(2)溶媒や温度に拠らず凝集体の円二色性強度がポリシラン濃度に比例することから測定した範囲では円二色性に寄与する凝集体の局所構造が初濃度に影響されない事がわかった。(3)様々な調製条件により得られた会合体の円二色性の絶対値が見積もられ、溶媒や温度の変化によって形成された会合体の局所構造について議論可能なデータが得られた。 さらに本年度は、このような現象が他の高分子凝集体について見られるかどうかを調べる為にこれまであまり研究がなされていない比較的ゆるいらせん構造をもつ多糖の誘導体や光学活性ポリメタクリレートを合成し、溶解性について研究を行なった。光学活性ポリメタクリレート1種類とアミロースやカードランなどの多糖の誘導体を数種類合成し室温付近に相分離温度や解離-会合温度を持つらせん高分子-溶媒系の組み合わせを見出した。
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