研究概要 |
光多機能ポリシラン薄膜を作製するために、1,薄膜中のポリシランの配向制御、2,側鎖にアゾベンゼン誘導体を有するポリシランの合成と光物性、3,Mo錯体存在下でのポリシランの光安定性と、ポリシランからMo錯体への電子移動過程、4,両末端に電子受容基と電子供与基を有するオリゴシランの励起状態、について研究した。 これらの結果については、分子構造総合討論会(広島)、ケイ素化学シンポジウム(東京)、光化学討論会(つくば)において発表し、また、一部については本年7月末に行われる国際有機ケイ素化学シンポジウム(Wurzburg)で発表の予定であり、現在投稿準備中である。それらの成果は次の通りである。 1,ポリ(ジ-n-ヘキシルシラン)を延伸法により基板表面に対して水平に配向させたポリシラン薄膜を作製した。この薄膜は熱履歴を持つことが明らかとなった。また、ポリ(ジ-n-ヘキシルシラン)溶液をポリジメチルシラン薄膜上にスプレーすることにより基板表面に対して垂直に配向させることに成功した。 2,側鎖にp-ニトロアゾベンゼンを様々な割合で導入したポリ(メチルフェニルシラン)(PMPS)を合成した。アゾベンゼンの導入により、PMPSの耐光性はおよそ500倍に向上した。また、アゾベンゼンの光異性化により、PMPSの主鎖構造が変化し、光によりポリシラン主鎖骨格を制御することに成功した。 3,ポリシランの光導電性を向上させるために、PMPS薄膜にMo錯体を添加した。PMPSの光励起により、PMPSからMo錯体への電子移動が確認された。また、Mo錯体の添加により、PMPSの耐光性も10倍以上に向上した。 4,ジシランの両末端に電子受容基であるシアノ基と電子供与基であるメトキシ基を有するオリゴシランを合成した。この化合物は励起状態において非常に大きな双極子モーメントを示した。
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