研究概要 |
光多機能ポリシラン薄膜を作製するために,1.薄膜状態のポリシランの配向制御,2.薄膜状態において光照射による可逆的な主鎖構造の制御,3.両末端に電子受容基と電子供与基を有するオリゴシランの励起状態,4.ポルフィリンの一重項酸素増感効率に及ぼすオリゴシラン導入の効果,について研究した. これらの結果については,国際有機ケイ素化学シンポジウム(Wurzburg),光化学討論会(福岡),分子構造総合討論会(東京),ケイ素化学シンポジウム(広島),PacifiCHem2005(ハワイ)において発表した.また,一部についてはChemistry Lettersに掲載され,また,その他の成果については現在,J.Phys.Chem.BやBull.Chem.Soc.Jpn.,Chemistry Lettersへ投稿中である.それらの成果は次の通りである. 1.延伸法によるポリ(ジ-n-ヘキシルシラン)の水平配向薄膜の調製とメカニズムの解明を行った(J.Phys.Chem.Bへ投稿中).また,垂直配向ポリジメチルシラン薄膜とスプレー法を利用して,ポリ(ジ-n-ヘキシルシラン)/ポリジメチルシラン垂直配向複合薄膜の調製に成功した.また,この複合薄膜間での光誘起電子移動反応を明らかとした(Bull.Chem.Soc.Jpn.へ投稿中). 2.側鎖にp-.ニトロアゾベンゼンを様々な割合で導入したポリ(メチルフェニルシラン)(PMPS)を合成した.アゾベンゼンの導入により,PMPSの耐光性はおよそ500倍に向上した.また,薄膜状態において,アゾベンゼンの光異性化により主鎖構造が変化することを明らかにした.また,加熱により元の構造に戻ることから,この変化は可逆的であり,スイッチング材料として期待できる事を明らかにした(Chemistry Lettersに掲載). 3.ジシランの両末端に電子受容基であるシアノ基と電子供与基であるメトキシ基を有するオリゴシランを合成した.この化合物は励起状態において非常に大きな双極子モーメントを示した(Chemistry Lettersに投稿中). 4.オリゴシランを置換基として有するポルフィリンを合成し,オリゴシランの導入によりポルフィリンの一重項酸素増感効率が向上することを見いだし,この化合物が癌の光線力学療法への応用が期待できる事を見いだした(特許出願中,投稿準備中).
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