(1)熱フィラメントCVD法を用いて、フラーレンを合成することに成功した。従来、フラーレンは、減圧下の不活性ガス雰囲気中において、炭素および金属触媒を用い、直流アーク放電やレーザー蒸発をすることによって、合成されていた。しかし、これらの方法では原料に比較的高価なグラファイトを用い、また生産量も限られているため、それらに代わる安価な大量合成法が望まれていた。トルエンなどの有機溶媒を燃やす燃焼法によって、フラーレン合成が行われているが、この方法では金属などを内包した金属内包フラーレンを合成することは難しい。このように従来法では困難であった、合成効率のよい、安価なフラーレン、カーボンナノチューブ合成法として、熱フィラメントCVD法を開発した。この方法では、低圧下の有機溶媒蒸気中で金属フィラメントを通電加熱して、有機分子を熱分解し、フラーレンを合成した。そして、HPLCによる分離を試み、C60のバルク量生成を確認した。 (2)金属内包フラーレンやカーボンナノチューブからの発光過程を蛍光測定装置を用いて調べた。特に、CVD法およびレーザー蒸発法で合成されたSWNTsについて、広範囲に(直径0.8-1.4nm)その発光特性を調べた。これによって明らかになったSWNTの発光特性として以下の3点があげられる。(1)タイプIに分類される半導体SWNTsの発光強度はタイプIIのそれよりも大きい(2)カイラル角が30°に近づくほど発光強度は強くなる(3)ジグザグナノチューブの発光が観測されない。そして、理論モデルと詳細に比較・検討した。また、電子顕微鏡観測により割り出した直径分布とも比較した。その結果、0.3nm以上の直径分布幅をもつSWNTsについて、発光マップから構造分布を求める場合には特に注意が必要であることがわかった。直径の細いSWNTsが優先的に溶液中に溶かされるためである。
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