研究課題
ポルフィリンは、様々な金属イオンを配位できる性質やその金属錯体の多彩な触媒機能に加え、優れた電気化学的・光化学的な特性のため、新しい電子・光学材料として広範な分野で盛んに研究されてきた。研究代表者は5,15-ジアリールポルフィリンの銀塩酸化によるカップリング反応を応用し、これまでに多種多様なメゾ位直結型の直線状ポルフィリン多量体を合成してきた。最近、メゾ位の置換基や置換位置を工夫ことで、より高次に立体的なポルフィリン多量体を合成することに成功している。本研究では、ポルフィリン多量体を環状にすることで新たに出現する光機能や配列した金属間の相互作用などを明らかにし、最終的に金属上の触媒作用を実現するべく研究を行っていく。5,10-ジアリールポルフィリンを出発原料として、銀塩酸化によって2量体を得た。これを光学分割し、さらに2量化して4量体を合成してシリカゲルによる分離後、一方の回転異性体を高希釈条件下で分子内環化し環状4量体を得た。同じ4量体を濃い条件で酸化すると環状8量体が得られた。さらに、3量体のひとつを酸化することで環状6量体を得ることにも成功し、一切スペーサーを介さずポルフィリン同士が直接結合したサイズの異なる3種類のポルフィリンリングCZ4、CZ6、CZ8の合成に成功した。環状ポルフィリン多量体と直線状ポルフィリン多量体の紫外可視吸収スペクトルを比べると、それぞれの形状に対応した励起子結合によって特徴的なスペクトルを示した。また、分子内の一重項励起エネルギー移動速度は、リングサイズではなく隣り合うポルフィリンの角度が重要なファクターとなって決まることを明らかにした。共有結合のみで結合した環状ポルフィリンとしては最も励起子相互作用が強く、天然のアンテナ系に匹敵する。これらポルフィリンリングは環状に結合した芳香族化合物としての観点からも非常に興味深い。
すべて 2005
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Journal of the American Chemical Society 127
ページ: 236-246