本研究は、自在な色素導入が可能なπスタックポリマー群の創製並びに、安定な刺激応答性ナノ材料の開発を目的としている。第2年度にあたる本年度は芳香族核を積極的に導入し、πスタックポリマーに新しい光学的・電気的特性を付与した。 1. 8-キノリノール白金(II)錯体を基体とした低分子ゲル化剤を合成した。電子顕微鏡観察により、ゲル組織は幅数十ナノメートル、長さ数マイクロメートルを有する繊維状会合体であることが明らかとなった。ゲル形成に伴う錯体部位の会合に由来し、ゲル自体の色と発光色を劇的に変化させた。さらに、燐光の酸素消光が、溶液中に比べ効率よく抑制されていることが明らかとなった。 2.オリゴチオフェンを基体とした低分子ゲルはその一次元的な分子集積によりオリゴチオフェン部位のコンフォメーションが固定され、有効共役長が伸びるために劇的な色調変化をもたらす。酸化還元活性を利用して化学的な酸化還元により可逆的に相転移を支配できることを明らかとした。 3.豊富な電気的・光学的特性を有するポルフィリンを分子デザインし、反応性官能基を有する低分子ゲルを作成した。ゲルを作成後in situ重合を行うことで高度に発達したポルフィリンワイヤの固定化に成功した。ゲル自体も物理的強度が増したことがレオロジー測定により明らかとなった。力学的刺激応答性材料開発への展開が期待される。 4.テトラチアフルバレンは単結晶中、一次元状の層状構造に沿った導電性を有する有機導電体として知られている。この一次元状構造をゲル繊維として切り出し、分子ワイヤを作成した。
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