研究概要 |
ナノ細孔をもつカルボン酸銅(II)錯体,trans-1,4-シクロヘキサンジカルボン酸二核銅(II)錯体1は、均一なミクロ細孔を構築しており、熱的にまたは酸化雰囲気下で極めて安定である。錯体1は種々のアルコールの酸化に対して高い触媒活性・選択性を示した。一方、過酸化水素と銅錯体の反応により得られた緑色の反応中間体H_2[Cu_2(OOCC_6H_<10>COO)(O_2)](2)の構造・組成を、粉末X線リートベルト解析、FT/IR、DR-UV、Raman、TG/DTA測定により確認した。錯体2のペルオキソ配位子は、[Cu^<II>_2(OOCC_6H_<10>COO)]の2次元ポリマーの層間にtrans-μ-1,2型構造で存在していた。また、TG/DTA測定結果より、錯体2のペルオキソ配位子は133℃付近でまで安定であった。さらに、錯体2が錯体1と同程度の窒素ガスを吸蔵したことから、過酸化水素存在下でも錯体1がナノ細孔構造を保持していることが分かった。熱的に安定かつ活性なナノ細孔銅-ペルオキソ種の単離・構造解析はこれまで報告されていない。 一方、金属ポルフィリンを含む新しいロジウム(II)錯体の合成し、オレフィンの水素化反応を試みた。金属ポルフィリンで架橋したロジウム錯体は以前に報告したRh^<II>_2[H_2TCPP]や他のロジウム触媒より高い触媒活性・選択性を示した。ポルフィリン中心金属による活性序列はPd^<II>>Cu^<II>>Ni^<II>となり、触媒の活性は表面積に依存せず、ポルフィリン環中心の金属に依存することが分かった。本反応は、ポルフィリン環中心金属に優先的に配位したオレフィン分子へRh2核サイト上に生成したRh-H種が分子内水素移行することにより進行した。
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