研究概要 |
本研究では、新規なナノ細孔を有するポルフィリンカルボン酸ルテニウム(II,III)錯体,Ru^<II,III>[H_2TCPP]BF_4(1)を合成し、FT-IR、DR-UV-vis、TG/DTA、粉末X線回折、元素分析、ESR、表面積・細孔分布測定等でその構造および組成を確認した。その結果、錯体1は5Å程度の均一なミクロ細孔を構築しており、熱的に極めて安定であることが分かった。この錯体1を固体触媒として用い、1気圧酸素もしくは空気を酸化剤とした種々のアルコールの酸化反応を行った。その結果、錯体1は反応温度25℃という低温であっても、ベンジルアルコール、1-オクタノール、シクロヘキサノール、2-プロパノール、1-プロパノール等の酸化に対して高い触媒活性・選択性を示すことが分かった。特に、直鎖の飽和一級アルコールの酸化に対して、これまでに報告のない優れた活性を示した。さらに、酸素雰囲気下での錯体1のESRスペクトルを測定すると、g値が2.03のところにルテニウム-酸素ラジカル種による新たなシグナルを観測した。錯体1の酸素による等温吸着曲線から、錯体1の二核ルテニウムサイトは、他のナノ細孔をもつカルボン酸金属錯体には見られない特異な酸素親和性を有していることが明らかとなっており、この特異な酸素親和性が酸化活性種であるルテニウム-酸素ラジカル種の生成を促進していると推察した。さらに、反応後の触媒を回収してもう一度酸化反応を行っても、活性低下が見られなかったことから、錯体1は再利用可能であることが分かった。
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