研究概要 |
ファインケミカル製品、中間体化学製品のような付加価値の高い物質の製造プロセスにおける多量の廃棄物の生成がグリーンケミストリーの観点から問題となっている。これは、これらの製造過程の多くが化学量論量の反応促進剤を用いた多段階の合成経路を経ることに起因する。触媒的にファインケミカルズを合成する方法も開発されてきたが、高価な金属錯体触媒の再利用が困難であることから、経済性、環境調和性に問題が残る。今年度、申請者は、スルホン酸、メルカプト基等の有機分子を構造規則性無機担体に複合化した各種触媒の触媒性能を検討し、以下の成果を得た。 1.スルホン酸固定化触媒:スルホン酸固定化メソポーラスシリカを合成し、その構造、酸性質とアセタール合成に対する触媒特性を検討した。本触媒は、ゼオライト、スルホン酸樹脂などの従来型固体酸に比べて高いアセタール収率を示した。 2.メルカプト基修飾触媒:SH基修飾メソポーラスシリカに固定化したPd^<2+>錯体(Pd-SH-FSM)を用いてHeck, Suzuki反応を行い,触媒性能と反応前後の触媒構造との関係を検討した.従来型触媒では反応後,PdはPd金属粒子に変化し,活性は大幅に低下したが、Pd-SH-FSMでは反応中の金属粒子の生成が最も抑制され,反応後もほとんどのPdがS原子に配位したPd^<2+>錯体として存在した.本触媒は再利用試験で最も高い反応速度とTONを示した.Pd-SH-FSMの高い活性,耐久性はメソ細孔内のSH基が反応中の金属Pdの溶出,凝集を効果的に抑制することによると結論した。 以上の研究成果は、メソポーラスシリカと有機分子を複合化した材料が環境調和型の有機合成反応に有効な新規触媒系であることを示している。
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