研究概要 |
まず、木材中に含まれる代表的な有用生理活性物質であるポリフェノール類に注目し、各種バイオマス中に存在する当該成分の種類や量を直接計測する新規分析法の開発を試みた。ここでは、マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(MALDI-MS)の手法に固体試料調製法を取り入れることにより、試料マトリックス中の各種生理活性物質を煩雑な試料前処理を行わずに直接分析できる方法論を新たに構築した。この計測法により廃材や木材廃棄物などのバイオマス試料を測定したところ、得られたMALDI質量スペクトル上には、質量電荷比が3,000程度までの領域に一連のピーク群が明瞭に観測された。これらのピークは、その質量電荷比などから、カテキンおよび水酸基の数が異なるその類縁物質から構成される、重合度が少なくとも10に及ぶポリフェノール類であると帰属された。さらに、2種類のアカシア属のバイオマス試料についてスペクトルパターンを比較したところ、それらの分子量分布には大きな差異は認められなかったが、各々のピーク群内での相対強度については有意な差が観測され、両試料間でポリフェノール分子のモノマー組成が微妙に異なることが示唆された。 さらに、水熱プロセスの高効率化のための検討として、各種の添加剤の存在がバイオマスの水熱プロセス効率に及ぼす影響を詳細に解析した。ここでは、各種添加剤の共存下でセルロースの水熱反応を実施し、生じた分解生成物の種類や量を詳細に分析することを通じて、それらの影響を詳査した。その結果、アルカリ類と金属触媒の混合系が、廃材や汚泥などのバイオマスの水熱変換効率を著しく促進することが明らかとなり、水熱プロセスの反応条件の適正化を行うことも出来た。
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