まず、反応熱分解ガスクロマトグラフィー(反応熱分GC)やマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(MALDI-MS)などの分析手法を応用して、各種バイオマス中に存在する有価物質の種類や量を直接計測する新規分析法の開発を試みた。その結果、以下に記す一連の成分を、煩雑な試料前処理を行うことなく、迅速かつ簡便に解析する分析手法を確立することが出来た。 1)樹皮廃材中に含まれる代表的な有用生理活性物質であるポリフェノール類 2)微生物中に含まれ、バイオディーゼルとしての利用が期待される一連の脂質成分 3)バクテリアが産生する生分解性プラスチック成分 さらに、水熱プロセスの高効率化のための検討として、バイオマスの詳細なガス化機構を明らかにすることも試みた。ここでは、バイオマス水熱ガス化によって生じる水素をその生成経路を区別したうえで定量することを試みた。具体的には、まず、各種バイオマスの水熱プロセスを、超臨界状態の重水(D_2O)を反応楊に用いて行うことにより、水に由来する水素ガスを同位体ラベル化しながら試料のガス化反応を実施した。こうして生じた水素同位体の混合ガスを極低温ガスクロマトグラフィー(GC)により分析することを通じて、水素ガスの定量をその起源を区別して行い、さらには水素の生成機構を解明することを試みた。その結果、今回用いた分解条件下では、水を起源とする水素が主に生成し、その主な生成径路は水性ガスシフト反応(CO+D_2O→D_2+CO_2)であることが示唆された。
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