C末端修飾プリオン蛋白質一次構造構築:N末端側を大腸菌発現、 C末端側を化学合成で調製したセグメントどうしを蛋白質ライゲーション反応で縮合させた。調製法に関する問題点を解決し、目的産物をえる手法を確立できた。しかしながら、縮合産物はその修飾基の影響を強く受け、プリオン蛋白質の可溶化を妨げる結果となった。そのため、脂質への再構成の試みはまだ、条件検討の段階を脱していない。その検討の過程において昨年度より以下の進展があった。 1)N末端側;プリオン蛋白質の機能を探ること・上記のような扱いの困難さを軽減させることを目的として、融合蛋白質発現系を数種類構築した。これらは発現蛋白質からチオエステルを調製するコンストラクトである。すなわち、プリオン蛋白質のN末端領域をトランケートしたPrP(89-212)-SRや、その変異体などである。また、これらはプリオン蛋白質の最大の特徴である感染性が、感染動物実験において確認されているものである。チオエステル調製の収率の向上はみられなかったが、精製が効率化された。 2)C末端側;エチレングリコールの骨格を基本としたリンカー部分を介してC末端をコレステロールなどと縮合させた。昨年度までリンカー部にアミノ酸成分を含んでいた点を改善し、また、修飾する部位を231Serから230Serへと修正を行った。 3)調製したC末端修飾プリオン蛋白質(23-230)および、非修飾のプリオン蛋白質を脂質と混合し、細胞へ添加した。その結果、導入操作において修飾プリオン蛋白質の溶解性が悪かったため、細胞へ十分量導入することができなかった。 上記をふまえ可溶化条件の検討と追跡を容易にする系の確立が必要であることが判明した。
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