タンパク質は特異的な立体構造を形成して機能する。しかし、タンパク質は凝集しやすく、応用利用する際にはネックになる場合が多い。現在までは、グアニジンやアルギニンをタンパク質溶液に添加する方法が用いられることが多かったが、これらは0.5Mから2M程度の高濃度が必要になるという欠点が残っていた。そこで、低濃度でも効果の高い小分子添加剤の探索を本申請の目的にした。 リゾチームの中性条件での加熱凝集と残存する活性を指標にして小分子を探索した。まずアルギニンの化学構造の特徴を調べるために、アルギニン誘導体の凝集抑制効果を調べた。その結果、アルギニンよりひと桁低い濃度で、高度に熱凝集を抑制する小分子が見つかった。例えばアルギニンエチルエステルを50mM添加しておくと、pH6.5での0.2mg/mlリゾチームの凝集を完全に抑制し、半分以上の活性も残存することが分かった。凝集抑制に効果が見られた。興味深いことに、調べたアミノ酸アルキルエステル全てに、同程度の凝集抑制効果が見られた。 凝集抑制効果が見られる小分子には、タンパク質の熱変性温度を低下させる作用があった。つまり変性構造により結合しやすい特徴を持つので、変性タンパク質分子間相互作用を抑制することになり、凝集しにくくなるのではなかろうか。このような特性はタンパク質分子間相互作用をうまくコントロールできる方法論に発展できるので、今後はリフォールディングやアミロイドへの応用利用が想定できる。
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