本研究の第一の目的は、新奇な一次構造を持つ亜硝酸還元酵素のN末領域に存在するタイプ1銅含有ドメイン(青色ドメイン)の機能について明らかにすると共に、新奇な電子伝達経路が存在する可能性について検討することである。具体的には、青色ドメインに電子を渡す、あるいは青色ドメインから電子を受け取るタンパク質を本培養菌株(メタノール資化性脱窒菌:Hyphomicrobium denitrificans A3151)から調製し、同定することである。 本研究計画の平成16年度研究目標は「青色ドメインの電子供与体ならびに電子受容体の同定」であり、その目標達成のためにまずは青色ドメインの電子供与タンパク質の探索・同定を行った。本培養菌株を破砕し得られた粗抽出画分を適当なカラムクロマトグラフィーにかけて細分画化して、青色ドメインへ電子を渡せるタンパク質がその中に存在するかどうか調べた。その結果、本菌株が生産するc型ヘム含有タンパク質のcytochrome c_Lから効率よく電子を受け取れることが明らかとなった。cytochrome c_Lとは本菌株が持つメタノール脱水素酵素(MDH)の生理的電子受容体で分子量約20kDaの電子伝達タンパク質である。そこで、申請者は本菌株が持つMDHとcytochrome c_Lそして、青色ドメインを一つの反応液中で混合し、青色ドメインが還元されるかどうかを確認した。その結果、青色ドメイン特有の600nm付近の吸収が時間と共に(触媒的に)減少し、すなわち、青色ドメインが電子を受け取って、還元型へと移行するということを実験的に証明できた。この結果は、本菌株内において「MDH→cytochrome c_L→青色ドメイン」という新しい電子伝達経路が存在する可能性が示唆され、学術的にも社会的応用の観点からも非常に興味深い結果と言える。現在、これら研究成果を論文にまとめている段階である。次年度はさらに両タンパク質間の電子移動メカニズムについてストップトフロー装置を用いた解析を行う予定である。
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