液晶性半導体を実用材料として用いる場合に問題となるのは、そのキャリア移動度と液晶相の出現する温度範囲である。キャリア移動度は分子間距離が短くなるほど向上するので、高次のスメクティック相を示す材料が有利である。温度領域の拡大には液晶分子に非対称製を導入する事により達成できると考えた。本年度は、室温付近で広い温度領域で高次のスメクティック相を示す液晶性半導体の合成と電荷輸送の評価を検討した。 非対称性を導入するため、terthiophene骨格、quaterthiophene骨格にアルキル基とアルキニル基を導入した化合物を合成した。特に、propylhexynylterthiophene、および、propylhexynylquaterthiopheneは室温を含む広い温度範囲で高次のスメクティック相を示した。後者の室温でのホールの移動度は0.1cm^2/Vsに達した。この値は、アモルファスシリコンや分子性結晶に匹敵する値であり、液晶性の有機半導体としては最高値であった。前者は室温付近で0.06cm2/Vsのホールの移動度を示し、-100℃においても高いホールの移動度を保持した。移動度の温度特性からホール輸送機構がディスオーダーした系のホッピング伝導が明らかとなった。この材料はキャスト法などの溶液プロセスによって均一薄膜を作製する事ができ、有機半導体デバイスへの応用に有望であろうと期待される。今後は、FETや太陽電池の作製を検討する予定である。
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