・薄膜化 室温付近で高次のスメクティック相を示す3-TTP-yne-4および、6-TTP-yne-4はスピンコート法、および、キャスト法により薄膜化が可能であった。溶液の濃度、および、回転速度を調整することにより、厚さ数100nm-数・mの薄膜を作成できた。偏光顕微鏡観察によると、数・m-数100・m程度のグレインが形成されており、一般的な分子性結晶の蒸着膜よりも大きなサイズのグレインが形成されていた。 ・光電変換材料への応用 キャスト法によって作成した薄膜を用いて、ITO/3-TTP-yne-4/Alの構成の光電セルを作成し、光起電力を調べた。電極構造の非対称性に基づく整流特性が観測され、3-TTP-yne-4が吸収する波長400nmの可視光を照射した場合には、印加電圧0Vにおいて、正負両極金属の仕事関数の差に由来する0.5V程度の光起電力が観測された。しかし、短絡電流は数100nAと低かった。これはキャリア生成効率が低いためと考えられる。 ・移動度の向上 2-phenylnaphthalene誘導体、および、alkylterthiophene誘導体のスメクティック相での分子間距離をX線回折により測定したところ、Fig.2に示すように、キャリア移動度とスメクティック層内の分子間距離との間に明確な相関関係が存在することがわかった。移動度を決める要因は分子間距離と、液晶分子の芳香環部分のπ軌道のひろがりであり、高移動度実現のためには、オリゴチオフェンのようなvan der Waals半径の大きなヘテロ元素を有する芳香環を有する液晶材料が有利であること、また、高次のスメクティック相において分子が密にパッキングしていることが重要であることが明らかとなった。3-QTP-yne-4は室温付近で、0.1cm2/Vsのホールの移動度を示した。この値は液晶材料としては最高の値であり、分子性結晶やアモルファスシリコンの値に匹敵する。この結果は、液晶材料でも分子構造を工夫して高次のスメクティック相を出現させることにより、分子性結晶並みの高品質な半導体を実現できることを示している。
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