皮膚科、形成外科等で皮膚疾患治療を目的として利用されているハイドロキノン(HQ)には酸素、光に対して不安定な性質がある。また皮膚刺激性も高く紅斑、かゆみ等が見られるケースがありその使用には十分な注意を要する。筆者が行う研究は、HQの美白効果は維持したまま高い安定、安全性を持つ美白剤の開発を主な目的としている。本研究では、それら確保のためHQと天然物由来界面活性剤(糖鎖界面活性剤)との分子錯体の獲得に努めた。分子錯体の生成確認は、主に紫外可視分光光度計、粉末X線回折装置を用いた。 糖鎖界面活性剤、n-Dodecyl-β-D-maltoside(DM)、n-Hexadecyl-β-D-maltoside(HM)、n-Octyl-β-D-glucopyranoside(OG)、n-Dodecyl-α-D-glucopyranoside(DG)、各々との間で分子錯体の生成が確認できた。また天然物由来界面活性剤の市販品が大変少ないことから自ら糖鎖界面活性剤の合成に努めたところ、様々な試験ができる量の獲得にはかなりの苦戦を強いられた。わずかな量ではあったが合成糖鎖界面活性剤との分子錯体生成を試みたが分子錯体結晶単離までは研究期間中に至らなかった。DM、DG、HM、OGとのHQ分子錯体のうち、比較的量を確保できたDM/HQ分子錯体を用いて30代女性ら、背部におけるヒトパッチテストを実施し、ICDRG判定基準に従い観察したところHQ単体では陽性反応が観察されたのに対し、DM/HQ分子錯体では陰性結果を得ることができた。以上の結果から天然由来界面活性剤との分子錯体形成を利用することで低刺激性の皮膚疾患治療薬開発を行うことができたと思われる。今後更なる工夫を施し、安定性高く副作用の少ない、皮膚疾患治療薬剤開発へと発展させたいと考えている。
|