研究概要 |
Na型膨潤性フッ素雲母をホスト結晶として用い,金属アルミニウム溶解法で調製した高濃度・高重合度の多核ヒドロキソアルミニウム錯体(PHA)水溶液との反応により,陽イオン交換能を有するミクロ多孔体であるアルミナ架橋フッ素雲母を合成すること,およびそのイオン交換能を利用してナノ空間を修飾した複合体を合成することを目的として研究を行い,以下の知見を得た. 層電荷の異なるNa型テニオライト系膨潤性フッ素雲母(Na_xMg_<3-x>Li_xSi_4O_<10>F_2,x=0.4及び0.8)をホスト結晶に選定し,金属アルミニウム溶解法により調製したPHA溶液との反応(層間挿入反応)により得られた架橋雲母前駆体を加熱処理することにより,ナノスケールの細孔を有するアルミナ架橋フッ素雲母を合成した.x=0.8のフッ素雲母への高重合度PHAイオンの層間挿入は困難であることが判明したが,比較的重合度の小さいPHAイオン(A113量体イオン)の層間挿入によりアルミナ架橋フッ素雲母を作製できること,及びホスト結晶の層電荷(x値)の相違により架橋フッ素雲母の細孔特性が相違することを見出した.また,Na型フッ素四ケイ素雲母(NaMg_<2.5>Si_4O_<10>F_2)をホスト結晶として得られたアルミナ架橋フッ素雲母のNi^<2+>イオン交換容量は最大約30mEq/100g程度であり,この架橋体の層間ナノ空間に挿入したCu^<2+>又はNi^<2+>イオンを,エチレングリコール又はジエチレングリコール中での還流による還元法によりCu^0又はNi^0に還元した複合体を合成可能であることを見出した.この複合体は架橋フッ素雲母のもつミクロ多孔性を維持しており,また外部表面上にCu^0又はNi^0微粒子の析出が観察できた.還元反応は還流中に層間ナノ空間で行われたと考えられ,還元された金属は層間ナノ空間にクラスター化して存在しつつ,外部表面上にも拡散したと判断される.
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