研究課題
本年度は、層状無機化合物として陽イオン交換性層状粘土鉱物を用い、スピンコーティングによる透明配向薄膜の作製条件の検討と、色素レーザー用色素として知られるRhodamine 6G(R6G)分子の集積化に関する検討を行った。その結果、スピンコーティング法による粘土透明配向薄膜の作製条件を明らかにすることができた。この手法により作成した薄膜へR6G分子を挿入した薄膜に対して、各種構造解析法(XRD、偏光分光法等)を適用することにより、得られた配向薄膜中のR6G分子の配向および会合構造を明らかにした。その結果、挿入R6G分子量を低下させたとしても、高輝度発光を示す材料を得ることは出来なかった。その原因として、R6G分子の易会合性により層間で無発光性の会合体が形成されることが明らかとなった。この無発光性のR6G会合体の粘土層間での形成を阻害するために、粘土層間へR6G分子と同時に光不活性分子である界面活性剤の挿入を試みた。アルキルトリメチルアンモニウム系界面活性剤であるCetyltrimethylammonium bromideとR6G分子を粘土層間に共存させることで、無発光性の会合体の形成を阻害できることを明らかにした。また、同時に偏光分光法から層間でのR6G分子の配向構造を明らかにした。このように界面活性剤によるR6G分子の会合阻害が可能になったことで、固体中にR6G分子を多量に集積するための指針を得ることが出来た。現在は、R6G分子の会合阻害を最も効率よく起こし、より多くのR6G分子を集積可能な界面活性剤の探索のために、アルキル鎖長とR6G分子の層間での会合挙動の解明を目指した研究を遂行中である。
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