研究概要 |
六方型キュービックアンビルを用いた高温・高圧合成法によって、以下に示す新規ジャーマナイドの合成とその構造解析に成功した。またそれらのうちいくつかについては物性測定も行い、バンド計算の結果とあわせて詳細な議論を行った。 まず、ストロンチウムとゲルマニウムを5万気圧、1200℃という条件で反応させることによって、新規ゲルマニウムナノネットワーク構造を有するSrGe_<6-d>を得ることができた。本化合物は網の目状に結合したゲルマニウムが比較的大きなケージを形成し、その中にストロンチウムがゲストイオンとして収納された構造を持つ。ストロンチウムとゲルマニウムの二元系では、もっともゲルマニウム含有率の高い化合物であり、その構造には、高圧によって誘起されたと考えられる歪んだ結合や、それに伴って生じる欠陥が存在することを明らかにした。また伝導度と磁化率の測定からは金属的な性質が認められ、本化合物が一般的なZintl相ではなく、新たな金属間化合物であることが明らかになった。熱電特性は期待したほど高くなかったが、この構造は、今後ゲスト原子の置換やゲルマニウムネットワーク部への化学修飾等によって、いわゆるラットリング機構による良好な熱電材料の母構造となる可能性がある。 次に希土類元素とゲルマニウムの高温高圧反応実験から、新たにPrGe_3,NdGe_3,TmGe_3の各新化合物を合成することに成功した。これらはいずれも重い電子系で有名なUGe_2に良く似た層状構造を有している。いずれも単結晶構造解析によって詳細な結晶構造を解析したが、PrGe_3,NdGe_3とTmGe_3とは層の積層形態が異なること明らかにすることができた。これは希土類イオンの大きさの違いによるものと考えられる。物性についてはいずれも金属的な伝導性を示し、磁化率測定からPr, Ndは三価であることが明らかになった。
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