平成16年度は計画通り、ペプチド修飾コロイダルシリカの合成法の確立に注力した。分子内にアミノ基を有するシランカップリング剤(アミノプロピルトリエトキシシラン)をコロイダルシリカ表面のシラノール基と反応させ、粒子表面にアミノ基を導入した。その表面に導入されたアミノ基を開始剤としてα-アミノ酸N-カルボキシ酸無水物(NCA)を重合した。また、あらかじめアミノ基が表面に導入されている市販のコロイダルシリカ粒子を購入し、並行して使用した。アミノ酸は天然に存在するものだけで約20種類あり、多くの組み合わせが考えられるが、本研究では、感熱応答が期待できるアミノ酸として疎水性アルキル側鎖を有するL-ロイシンと、pH応答が期待できるイオン性側鎖を有するL-グルタミン酸とを選探し、それらを用いたコロイダルシリカ粒子への表面修飾を行った。どちらの系においても、動的光散乱法(DLS)によって修飾前後の粒径の変化を評価した。その結果、修飾前には70nmであった粒径が、修飾後に100nm以上となった。この粒径の変化は表面にペプチドが結合したことによると考えられる。粒径分布に関しても単峰性のピークが得られており、表面でのアミノ酸の重合が制御された状態で進行したことがわかった。また、ペプチド修飾後の粒子分散液をマイカ基板上にキャストした物を原子間力顕微鏡(AFM)で観察したところ、DLSと同様の粒径変化が観察された。また、単一粒子に関して詳細な観察を行ったところ、固いコア粒子の周囲に柔らかいコロナ状のシェルが観察されたことから、コロイダルシリカ微粒子のペプチド修飾に成功したことが確認できた。次年度はペプチドからなるシェルが示す刺激応答性の評価に取りかかる。
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