プロトン伝導性酸化物を用いた高効率な水素分離膜の開発の為に、本年度は多孔金属管の作製並びにプロトン伝導性酸化物SrCe_<0.95>Yb_<0.05>O_<3-δ>の物性研究を行った。具体的にはNi管に対して高温酸化・還元処理を施すというシンプルな方法により種々の多孔度、孔径を有する多孔性Ni管を作製した。直径1mmの緻密Ni管を用いて上述の手法を用いることによりサブミクロンからミクロンオーダーの孔径を実験条件により制御可能であった。また作製条件を最適化することによりサブミクロン径の均一な孔形成のできる条件を見出した。作製した多孔性Ni管のガス透過測定を行ったところ、窒素に対して5x10^<-3>cm^3(STP)/(cm^2・s・cmHg)、ヘリウムに対して1x10^<-2>cm^3(STP)/(cm^2・s・cmHg)を上回る透過能を得たことから、水素分離膜の支持体として十分用いることが可能であることが分かった。 また、SrCe_<0.95>Yb_<0.05>O_<3-δ>の伝導度測定を直流四端子法にて、種々の温度、ガス雰囲気下で行った。これらのデータは以後の水素透過実験において、Ni及び酸化物が期待通りに機能していることを確認するために用いる。さらに本材料の安定存在領域を探るため、種々の酸素分圧、水蒸気分圧下におけるX線回折並びにラマン分光測定を行うことによって、分解生成物の有無を確認したところ、1073Kという高温での水素中においても2℃以上の加湿条件(水蒸気分圧7x10^2Pa以上)では本材料は非常に安定であることが分かった。今後多孔性金属管支持体の孔部に緻密なプロトン伝導層を形成することで、高効率水素分離膜を開発する予定である。
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