ニッケル多孔管を作製し、その細孔部にプロトン導電性酸化物を充填した水素分離膜の開発を目指した。まずニッケル多孔管については、直径1mmのニッケル管(厚さ0.10mm)を空気中、1200℃で酸化を行い酸化ニッケルとした後、水素気流中(50ml/min)で再びニッケルに還元する手法により作製した。これは還元の際に体積収縮を起こすことを利用して多孔性を発現させるものであり、還元条件により孔径、多孔度を制御したニッケル多孔管を作製することができた。ガス透過測定ではHeにおいて7x10^<-6>mol・m^<-2>・s^<-1>・Pa^<-1>という値が得られたので表面だけでなく、孔が均一に分散されたガス透過性のある金属管が作製できていることが分かった。次にこの細孔に導入するプロトン導電体としてSrCe_<0.95>Yb_<0.05>O_3を固相法で合成した。その粒径のメジアン径は合成後14.4μmであったのが、ボールミル粉砕により0.53μmまで減少し、約1μmの細孔を有するニッケル管に導入することができると考えられた。そこで種々の方法で微粒子の細孔への導入を検討した。その結果、高分散させた微粒子を含む溶液中に減圧した金属管を含浸させることで、効果的に微粒子を細孔部に導入できる条件を見いだした。このようにして作製した膜を高温水素雰囲気下におき、純ガス法によって透過実験を行ったところ、4.05×10^<-2>cm^3(STP)/cm^2・s・cmHgというほぼ目標を達成できる水素透過能を得ることができた。今後ここで確立された手法を更なる抵抗低減、比表面積向上が達成できるように改善していくことにより、優れた水素分離膜が開発できるものと考えられる。このためには例えば複合めっき法を用いた金属とプロトン導電体微粒子のダブルコーティングが考えられる。他のガス共存時の影響や、膜の耐久性については今後詳細に検討していく必要がある。
|